海を走る氷の馬

この世の楽しそうなこと全て体験しないと気が済まない

出産の記憶

出産の思い出を記録しようと入院中に書いた日記に手を入れようと思ったけど、長すぎるしどう構成したもんか分からなかったのでそのままここに残しておきます。お暇なときに読んでね……

 

とうとう逆子が治らなかったので38週で帝王切開で出産することになった。検診であさって手術する?って軽く聞かれたけど心の準備ができなかったので翌週にしてもらった。そんな急に〜って思ったけど、自然分娩だったら急に陣痛来るんだよな、慌ててもしょうがないよな、と思い直す。

手術前日に入院し、主治医や執刀医、麻酔科医から代わる代わる手術の説明を受ける。私は去年開腹手術を受けていて、その時の腸の癒着がひどかったため今回は腹膜外帝王切開というすこしマイナーな術式で出産することになった。普通は腸や肝臓、子宮などの臓器を包んでいる腹膜というものを切って子宮を開けるんだけど、腹膜には触らず子宮が腹膜から出ている一部分を切るというもの。その部位にアプローチするには膀胱をはがしてどける(!?)必要があるので膀胱を傷付けるリスクはあるものの、腹膜はいじらないので腸にこれ以上の癒着を起こすことは避けられる。

オペ室の看護師さんも説明に来てくれたんだけど、どう見てもお腹が大っきくて聞いてみたら「来月から産休です〜」と言われてたまげた。絶対しんどいのに本当にありがとうございます。「手術の間音楽かけられますけどリクエストあります?」って聞かれてそんなんあるんだ!?ってビックリした。なんか気恥ずかしくてハロプロを流して欲しいとは言えず、なんでもいいです……とボソボソ答えた。

産後は余裕ないだろうしWi-Fiを契約しなかったので、手術前夜はヒマだった。お題箱を募集したらけっこうたくさんの人が質問を送ってくれたおかげで時間がつぶせて助かった。


夜中小さいけど地震あって怖かった。何度も目が覚めてしまい6時過ぎに起床。7時ごろ看護師さんが来て、オペ着に着替える。採血と点滴のルートを取ろうとするが失敗。いつも血管が見つからなくて一発で点滴してもらえた試しがない。8時過ぎに別の人が来て無事ルート確保、点滴が始まる。でもシーツに血が染みたので取り替えてくれた。

そうこうしてるうちに、ロンドンのお姉ちゃんも出産したと一報が!お姉ちゃんとは3週間違いの予定日でほぼ同時に妊娠していたんだけど、私は早まりお姉ちゃんはなかなか産まれず時差もあって1日違いの誕生日になった。惜しかったな〜!

9時に内診室で内診&エコー。内診室の前で待っていたら、前回の入院の主治医だった先生が通り掛かり、顔を覗き込んで「今日ですね」と言ってくれた。覚えててくれたんだ〜!と感動。

朝ごはん食べてないってだけなのに「絶飲食」という言葉が効いてめっちゃおなかすく!!!のどかわいた!!!

11時半頃父到着。13時からの予定が30分繰り上がり、ごはんを食べていた夫と義母さんも急いで到着。着いてすぐ呼ばれたので慌ただしくオペ室へ移動した。


丸まって背中に麻酔を打ってもらうんだけど、局所麻酔だけでも痛いしめっちゃ時間かかる!!なにこれしんど!前回は先に全身麻酔してたから知らなかったんだ……。前回の手術とどっちがたいへんかなーとか呑気に思ってたさっきまでの自分をぶん殴りたい。硬膜外麻酔がなんとか終わり、くも膜下麻酔の時に右足がビリッとしびれて怖かった……。

手術が始まっても息苦しくて軽くパニックだったかもしれない。気持ち悪い。うまく息ができない。痛みはないけど内臓を触られてるってすごく変な感じ、こわい。焦げ臭いにおいがする。お腹はもう開いていて、子宮をどこから切るかというのを先生たちが念入りに話し合っている。右側は完全に感覚がないけど、左はなんか触られてるのとかすごくよくわかって怖い。

なんか途中寝たのか意識飛んだような気もするんだけど、気付いたら息がしやすくなってた。麻酔がよく効いたのかな?看護師さんも何度も大丈夫かと話しかけてくれる。そういえば音楽なんもかかってないな。


いよいよ切るぞ、というムードになった。そこからはめちゃくちゃ早くて、「お尻出ました」「もうあと頭だけです」の声かけの後、内臓がすごい引っ張られる感じがして「ホニャ、ホギャア」って産声がした!思わず涙が溢れる。一気にオペ室のムードも緩和した感じがした。「大きい」「大きい!」「ずっしりしてる」という先生たちの声も聞こえる。看護師さんが涙を拭いてくれた。「右側できれいにしますねー」の声とともにぽてちが移動してる気配(まだ見えない)。ぽてちというのはお腹の赤ちゃんにつけてたあだ名です。私の血とぽてちの羊水を吸うバキュームの音がする。しばらくすると看護師さんがぽてちを連れてカンガルーケアにやってきた。胸の上に乗せてもらう。柔らかい!!「よ……よく来たね〜〜〜」と夏休みに孫が遊びにきたおばあちゃんになってしまった。がんばったなぁぽてち。でも近すぎて耳しか見えない。黄色いお帽子をかぶせてもらっている。まだらに胎脂がついてるけど思ったよりきれいだ、よくふいてもらったんだね。少しもそもそはしてるけどほとんど動かず、しばらく乗っけてもらったあと、ぽてちは先に病室に上がっていった。

ここからお腹を閉じ終わるまでが長かった。「ギリギリ腹膜外って言えるかな」「まぁ腸に触らないという目的は達成できましたから」みたいなことを先生が話してるのが聞こえる。難しかったんだ。麻酔が切れてきたのか、どんどん左側が痛くなってきた。グイッとお腹の皮を引っ張ってなにかされてる時にあ〜〜〜もう無理です〜〜〜ってなって硬膜外の麻酔の追加と、点滴からも麻酔を入れてもらったら大丈夫になった。ドレーン(術後の浸出液とかを排出する管)を入れてるとこだったらしい。とうとう手術室に音楽がかかることはなかった。


ベッドごとガラガラと病室に運ばれて、赤ちゃんに会える!と思ったらいなかった。アレ?と思ってたらなんか検査に連れてかれたよ〜と他の家族に迎えられた。そこから私はガッツリ発熱し、赤ちゃんは新生児室で預かられていたため朦朧として記憶がない。ほとんど気を失うように眠った。