海を走る氷の馬

この世の楽しそうなこと全て体験しないと気が済まない

退院しました

突然入院して、あれよあれよという間に左の卵巣と卵管を切除した。

へその下から股まですっぱり腹を切って手術したからどんな体勢を取っても痛みはあるんだけど、術後10日でここまで回復するのかという驚きがある。手術直後はくしゃみした瞬間に縫ったとこから裂けんじゃないかという痛みで「…シテ……コロシテ……」状態だったけど、今はくしゃみしても「殺す!!!!!!!!」って感じにブチ切れられるほど主体性を取り戻して来ました。とにかくくしゃみが憎い。花粉の時期だったら発狂して窓から飛び降りてたかもしれん。

術後に体液とかを排出するドレーンという管をお腹に入れます、とは聞いてたんだけど、マジでダイレクトにお腹にチューブが4本ぶっ刺さってたので結構ひいた。チンアナゴ状態のチューブからくっせぇ液が出るのでガーゼを替えてもらうのだけが楽しみだった。抜く時も想像の2倍の長さのチューブがにょろろろろろって出てきて怖すぎて笑ってしまった。

突然の入院だったから個室が空いてなくて4人部屋で2週間ほど過ごしたんだけど、患者が多いということはその分看護師さんが部屋を訪れる回数も多いということで、頻繁に医療者の気配がすることで安心感があった。と思いきや金田朋子のような声の女が入院してきて生活は一変。「生理的に無理な声」というものにはじめて出会ってイヤホンが手放せなくなってしまった。ちょうどよく私は回復に向けてどんどん動かないといけない時期に差し掛かっていたので、がんばって部屋から離れて病棟内を歩いてみるいいモチベーションにはなった。

行きたかったライブに2つ行けず、これから予定していたライブも4つほど飛ばしそうで(しかもとても好きなアーティストの久々の来日もあって東名阪全部いこうとしてた)オタクは悲しんでいます。傷が完治するまで向こう半年くらいかかると聞いた時はマジかよと思ったけど、まじめにテープを貼ったりしないとケロイドになったりするらしいのでがんばります。

なんかすごい体験をしてしまったな……というのが一番の感想かな。あと重湯は二度と食べたくないです。いや~よくがんばったね私……えらいよ私。ずっとちゃんと洗顔する気力がなくて、今まで見たことないくらい毛穴が真っ黒に汚れてるのでクレンジングするのが楽しみです。

ちなみに右の卵巣と子宮は残っているので今回の手術のあれこれが落ち着いたら不妊治療も再開するつもり。お腹中に広がってた膿もきれいにしてもらったので環境は良くなってるはずだと思う。でも早期閉経はおそらく免れないので今から更年期が怖い!お、女の人生よ~~~。術後疲れてる時にお母さんが「厄年が近いから」とか言ってくるから「非科学的なことを言うな」と怒ったら、「昔からなにか体調に異変が出たり病気になったりするのが多い年を統計したものが厄年と呼ばれてるだけで順逆だ」と言われてちょっと納得した。曲がり角にきたことをめちゃくちゃ実感してます。

 


以下忘れないうちにいま一気に書いた忘備録なので長くて推敲もしてないけど、お暇な方はどうぞ。

 


手術が決まるまでは怒涛の展開だった。なんか微熱だしお腹も張るな?って感じだったのが10月の頭。不妊治療で妊娠判定を待っている期間だったので、もしかしてこれは妊娠の超初期症状かも!?なんて期待してたけど妊娠してなかった。なーんだと思いながら三連休に入ったら見る見る間にお腹が痛くなり連日38℃越え、休みが明けてからすぐ不妊クリニックに相談に行った。明らかに子宮が痛くてなにか起きてることは間違いなかった。内診してもらって抗生剤の点滴を受けて、さぁこれで良くなるかと思ったら悪化する一方。近所の総合病院に紹介状を書いてもらい、受診したらそのまま入院してしまった。入院手続きを待つ間も待合室で座ることすらできなくて、痛みで涙をダラダラ流しながら診察台で横にならせてもらってた。カーテンで仕切られた横の診察台では妊婦さんが赤ちゃんの心音確認をしていて、私は自分の赤ちゃんの心音なんて聴ける日は来ないかもしれないな…とつい思ってしまって涙が加速した。泣いたら余計に痛いのに止まらなくて辛かった。

入院してからはトータル2週間のあいだ24時間点滴されっぱなしで、血管がどんどんダメになって手の甲にも足にも針が入った。十数カ所に内出血が残ってる。入院してからは痛みの範囲がどんどん広がり、一度は病院内のトイレで低血圧になりすぎて動けなくなってナースコールしてしまった。はじめて唇に色がない自分の顔を見て、ああ唇ってほんとに血の色なんだ……とボンヤリ思いながら部屋まで運ばれた。

はじめは経膣で細菌に感染する骨盤内膜炎という疑いだったけど細菌検査では常在菌しか出てこなくて、なのに血液検査では炎症と白血球数が異常値を叩き出したらしく緊急でMRIも撮ってもらった。怖いのかなぁと思ってたら予想外に寒くて凍えた。そのMRIの所見では、明らかに左の卵巣の写りがおかしいが、ただのチョコレート膿腫ではなさそう&チョコレート膿腫が破裂を起こしている可能性があり、痛みの範囲からして膿が広がっていそうだから開腹手術になるだろうという説明を受けた。卵巣の手術って腹腔鏡でできるってイメージが強かったから、思いがけない開腹にビビってしまった。元々あるのは分かっていたチョコレート膿腫だったけど、そこに感染を引き起こして破裂したか、破裂したせいで感染したかは分からないが合わせ技一本っぽかった。もうこの辺では自力で歩くことは一切出来ずに車椅子を押してもらっていて、ベッドに移ることすらめちゃくちゃしんどかったし、まぁ寝ててもしんどかった。痛み止めは飲み薬も点滴も効かなかった。

夜中ずっと助けて助けてって思ってたら、お姉ちゃんが「なんか分かんないけどひなを助けなきゃいけない夢を見た」といって連絡してきたので泣いてしまった。お姉ちゃんは私が赤ちゃんのころの入院の時(生まれてから2年くらい入退院を繰り返すかわいそうなこどもだった)病院でテクマクマヤコンのおもちゃを買ってもらって、「テクマクマヤコンひなちゃん退院になーれ」って言ったらその日に退院が決まったという逸話があって、お母さんとお姉ちゃんの魔術再びだねと言って泣いた。でもお姉ちゃんは心配性すぎるから手術が終わってから本当のことを言おうと思ってその場ではごまかした。

お腹開けてみてどうなってるか分からんということで若い担当医ではなく婦人科の部長自ら執刀してくれて無事手術は終わった。麻酔から覚めて最初に「卵巣残せましたか?」と口に出せたことに驚いたけど、答えてもらうまでのほんの少しの言い澱みで理解した。なるべくガワだけでも残したいと言われていた卵巣はチョコレート膿腫共々中が全部膿になっていて、カチコチになった卵管と一緒に切るしかなかったそうだ。

夫と母は確認のためにこの切った卵巣を見せられたらしく、術後の確認ってそんな恐ろしいことすんのかいと驚いた。私の腹腔内は「ここ最近で一番の癒着と膿」だったと聞いてそんなボジョレーヌーボーみたいな評価あんのかよと思ってちょっとウケてしまった。道理で1本か2本と言われてたドレーンは4本入ってるし普通3日で抜けるところが1週間かかったわけだ。昨日今日発症したことではなく、逆にこの状態で痛みが今まで出てなかったのが不思議な状態だったらしい。炎症反応がかなり強かったみたいで、本人としてはめっちゃ順調に回復してるな!!って思ってたけど先生たちはみんな心配してくれてたようだった。

入院した病院はチーム医療が徹底しているようで、私の状態を把握してる先生が少なくとも6人はいた。毎日回診は違う先生だったりしたけど情報がちゃんと共有されてる感じがあって不安はなくてよかった。先生や看護師を好きになってしまう患者がいるのが分かるほどどの人も頼もしく親切でありがたかった。手術した日は夜中看護師さんが1,2時間おきに様子を見に来てくれて都度氷を口にふくませてくれたのが救いで、白衣の天使通り越してもはや神だった。ひとりタメ口をきいてくる看護師がいて、うわ~介護するお年寄りを赤ちゃん扱いするタイプの女~と思って最初は嫌いだったんだけど、言動が面白くて一周回って好きになってしまった。ガサツでアルコール綿ビシャビシャのままあててくるからいつも服濡れるし私のスリッパを必ず蹴散らしていくので彼女の夜勤明けはいつもスリッパを探すところから始まってウケた。なのに点滴が終わる完璧なタイミングで来てくれるし彼女がガーゼを変えてくれるときが一番痛くないという不思議なバランスの子だった。

術後は腹筋に一切力が入れられなくてきばれないので、便を柔らかくする下剤や腸の動きをよくする漢方が処方される。この下剤が曲者で、はじめの日に言われた通り毎食後2錠飲んだら三日三晩下痢になった。私の場合2日に1錠でもちょうどいいくらいだった。これを1日6錠必要とする人って本当にいるのか…?下痢でも普通のお通じでもなく軟便をキープするのがベストということで、今人生で一番うんこについて真剣に向き合っている。腸の動きの様子などで下剤を飲むタイミングについていつも考えています。急にうんこの話してすまん。

帝王切開した義妹が電動ベッドをうまく使って痛みを最小限に抑える離床法を教えてくれて、これが本当に役に立った。自力では起き上がれなかったので助かった。術後の癒着を防ぐためには翌日から歩いたりしないといけないとのことで、ずっと寝ていたい気持ちを抑えてなんとか一人でトイレに行ったり廊下を亀の速さで歩いたりしているうちに、確実に一日一日快方に向かうのを感じることができた。今一番の心配事と言えば私の体調を心配するあまりお母さんがやれ免疫のつく食事だ冷えとりだオーガニックだと言い始めていることで、頼むから民間療法を調べてくれるなよと祈っている。そりゃ昔からの食事療法もあるだろうけどもう2018年も終わるのだ母よ。そうでなくても健康番組ばかり見ているのでやはり老人をヒマにさせるのは良くない。

お腹のキズはなかなかにフランケンシュタインで、このままハロウィンに出たら凄みがあるなとか思う。そう今年は大好きなハロウィンの仮装ができなくなってしまってつまらない。本当ならこの週末東京へ遊びに行くはずだったんだけどな。

夫は入院してから1日も欠かすことなく毎日お見舞いに来てくれた。忙しいのにフレックスを使って朝早くから出社して面会に間に合うように調節してくれた。健やかなる時も病める時も、とは言うがやはり本質が出るのは病める時です。コンビニ弁当が続いてる夫に早く好物のからあげを揚げてあげたいよ。

 


実感したいです 喉元過ぎればほら酸いも甘いもどっちもおいしいと

これが人生~~~私の人生~鱈腹味わいたい  誰かを愛したい 私の自由

この人~~~生は~夢だらけ~~~(パラッパーパッパー……)