海を走る氷の馬

この世の楽しそうなこと全て体験しないと気が済まない

2018年

普段特に決まった予定もないのんびりとした日々を過ごしているが、12月の中頃から急にポンポンと(主に遊びの)予定が入り、なぜか分からんがとても慌ただしくも楽しい年末だった。夫の実家は家族で集まるのがお正月よりも大晦日がメインで、義父が仕込んでくれた大量の料理をみんなで食べながら紅白を見て年を越すのが例年なんだけど、夫の実家に着いた瞬間くらいから夫が突然体調不良になってしまい、早々に切り上げて自宅に戻ってきた。夫は可哀そうに青い顔をして寝込んでいる。ずっと今年の一年の話をブログに書きたいと思ったまま忙しくしているうちに大晦日になってしまったので諦めていたんだけど、急にポッカリ時間ができたので今急いで書き始めました。あと43分のうちに書き上げたい。

 

今年は私にとっては激動で、ブログで繰り返し書いてるけど不妊症発覚・治療開始、卵巣膿腫が破裂して卵巣摘出手術、という「生殖……」みたいな一年でした。本当に一年中生殖と自分のアイデンティティについて考えていた気がする。

不妊だったり病気したことで、自分の価値観は大いにアップデートされたと思う。一番変わったところは、「人間って全員が全員違う」って分かったことです。私はこの当たり前のような概念を、分かった顔して全く分かっていなかったことに気付いたんだよね。無知の知?頭では分かっていたけど実感を伴ったのは生まれて初めてでした。私は十代の頃は「個性」という言葉が大嫌いで、そんな「個性」なんてわざわざ言わんでも人は誰だって違うしおんなじようにはできんわい勝手に滲み出てくるもんじゃいとか思ってたんだけど、社会に出ていろんな人と知り合ううちになんだかんだ言って価値観ってわりとグルーピングされてるよねと考えるようになっていたんです。でも不妊症という自分としてはとても受け入れたくない大きな欠損があることで、私は本当の意味での「多様性」ということがわかった気がしたんです。今までの私は、多様性のことを「自分と違う人も受け入れよう」だと思っていたんだなぁってわかった。そうじゃないんだよね。まぁもちろんそれも必要だとは思うけど、「自分と同じ人はいなくて、あなたもあなたもそれぞれ違うね、みんな違うもの同士一生理解はしあえないけど一生分かろうとする努力を続けていこうね」ってことなんじゃないかと思ったんです。自分と同じ不妊の症状に悩む人でも、どんなに同じように見えても細かい部分は全然違って、もちろんパートナーも違うから同じ悩みにはなり得ない、どこまで行っても孤独な道なのだと思ったことがこう考えるきっかけだと思います。不妊症のみんなと一緒にがんばるぞ!とは思っているけど、壁の高い迷路の中にいて声だけ聞こえるから励ましあってるみたいなそんなイメージです。

病気で人が変わるっていうのは分かる気がするなぁと思った。普段自分の体、肉体を強く認識することってほとんどなかったんだけど、病気するといつも自分を歩かせている筋肉とかこうして物を考える脳とか全てが当たり前じゃないんだと思わせられるからなのかもしれない。だって開腹手術に臨む手術台の上で命の危機を感じることなんてなかったけど、普通に考えて腹切って臓器とってまた縫い合わせてなおかつ生きてるなんておかしいでしょ。医学やばい。それを受け取れる社会ありがとう。ね~本当に医学部の女子受験生減点のこと許さんからていうかとにかく医療者とか介護者とか保育者とか教育者とか命に関わってくれる人のことちゃんと守って!!お賃金上げて~~~!!!

 

そんな感じで人生観に変化があったところで、創作に対する考え方も変わりました。創作はどこまでいっても自分を救うものなんだな。もちろんそれで人に喜んでもらたり気に入ってもらえたりしたら嬉しいけど、それはオプション。ご飯美味しいに越したことないけど栄養が取れるのがまず第一みたいな感じです。なぜものをつくったり書いたり歌ったりするのかといえば、それはやはり自分にケリをつけるためなんだなぁ、と今の私は思っている。暗い感情がないと芸術が成立しないみたいなことにずっと反抗し続けてきたけど(なぜならいつでも幸せだから)はじめて自分に欠損を認めてその考えもちょっと違ったことがわかった。栄養が足りてない状態だからより多くの栄養が必要だっただけってことかもしれない。与えられないから自分で作る、そういった切実さがもしかしたら作る何かに真実味を帯びさせるのかもしれない、そういう表現の世界があるのかもしれない、と思いました。

 

いつまでもね、受け入れられないんですよ不妊症だってことを。今も新鮮に悲しいんです。でもだからこそこういうことを考えるようになったし、誰のことも100%理解はできない、でも理解したいんだ、わかり合いたいんだって気持ちを捨てることだけは絶対にしたくないと思った一年でした。本当はここからbutajiさんのアルバム「告白」への思いにつながる予定だったんだけどもうタイムアップ、23:58です。あっ除夜の鐘が鳴り始めた。sportifyあるので聴いてくれ。

 

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それではみなさん良いお年を。