海を走る氷の馬

この世の楽しそうなこと全て体験しないと気が済まない

不妊治療の基本検査について

今日のブログの結論は「みんな婦人科に行ってね!」ということです。頼んだよ。


前回書いたブログには思った以上の反響をもらって驚くやらありがたいやらです。ひとつだけ聞いてほしいのは、私出産することだけが女の喜びなんて思ってないよ!?大前提すぎて書こうとも思わなかったけど子供のいるいないに良し悪しなんて無いよ。ただ私は今子供欲しいと思ってるよっていうだけです。女性の生き方にもっと選択肢を!と前のめりになる気持ちはめちゃくちゃ分かるんだけど、かと言って私の気持ちまで時代錯誤のいけないもののようにされても困っちゃうな〜という思いです。伝われ〜!

 

さて今回は不妊検査についての話を書きたいと思います。不妊にも様々な原因がありますが、私の場合は卵管狭窄・閉塞が大きな問題の一つで、さらに子宮内膜症・AMH値が低いという良くない点があります。順にどういうことか書いていきたいんですが、私は素人なので間違った記述がきっとあると思います。少しでも気になる部分がある人はぜひ婦人科を受診してみてください。

 

 

まず子宮内膜症については二十代前半から分かっていました。
何年か前に子宮頸がんの原因となるHPVウィルスの予防接種が日本で受けられるようになりました。巷で子宮頸がんワクチンとか言ってるやつです。本来は性交渉前の女子が対象だけど、母の勧めもありはじめて婦人科にかかりHPVワクチンの接種*1を受けました。その過程の内診で、私は子宮内膜症になっており、左の卵巣にチョコレート嚢腫という血の塊ができていることを告げられて心底驚きました。だってそれまで生理で悩んだことなんてなくて、止まったり不規則だったこともなく、まぁお腹は痛いけどみんなそんなもんでしょ?と思っていたから。子宮内膜症というのは本来子宮にしかできないはずの内膜(これが剥がれ落ちるのが生理)が他の部分にできちゃうっていう病気で、原因はよくわかっていないみたいです。私のチョコレート嚢腫は手術などが必要なサイズではなかったため、定期的な経過観察をしていきましょう、妊娠すると(生理が止まるので)嚢腫が小さくなる人も多いから妊娠はあまり後回しに考えないほうがいいですよ、というようなことを言われました。そこから少なくとも年に1回は婦人科で検診を受け、特に嚢腫のサイズは変わらないような数年を過ごしていました。

 

そんな訳なので、結婚してからは「二人だけの時間を」とはあまり思わず、引っ越しなどが一通り片付いたところでまずは自己流で妊活を始めました。基礎体温を計って排卵予定日を推測する形だったけど、はじめのうちは計り忘れることがとても多くて全く役に立たず。市販の排卵検査薬を使って排卵日を予測したりもしましたが、どうもらちがあかないなと思って一般の婦人科で排卵日を見てもらう「タイミング法」を何回か行いました。なんか妊活用語で排卵日を狙ってセックスすることを「タイミングを取る」とか言います。
そうこうしているうちに、夫の妹が妊娠したことが分かりました。それまで誰の妊娠報告を聞いてもいつも普通に良かったね!と思っていたのに、義妹の妊娠に私は取り乱してしまった。長男の嫁というプレッシャーを一人で勝手に感じていたんだと思います。私達の1年後に結婚した私と同い年の義妹なので、やっぱり私の体ってなにか問題があるんじゃないか…?という疑念が強くなり、通っていた婦人科の先生が嫌いだったこともあり不妊専門のクリニックの門を叩きました。電話をしたら初診は2ヶ月待ちというから驚き。不妊治療する人が増えているっていうのはこういうことか……と実感しました。

 

専門のクリニックではまず最初に様々な基本検査をします。生理に合わせてホルモンなどが変化しているので周期によってできる検査が決まっていて、私はだいたい1ヶ月半くらいかけて4回通院しました。採血!検尿!採血!ご開帳!採血!という感じでとにかく血を抜かれるけどそれでかなりのことが分かるので医学はすごい。並行して各種感染症やがん検診も一緒に行っていきます。都度エコー検査があるんだけど、あのエコーの棒もうちょっとなんとかならんもんかな〜!?柔らかいシリコンで包んでバイブみたいにしてほしい。いくら細くても表面が硬いもん突っ込まれたら痛いんや……性産業からなんらかのヒントを得てくれ……。
しかしエコーの痛さなんてかわいいもんで、本当の恐怖は卵管造影検査でした。これは子宮に造影剤を流し入れて卵管がきちんと通っているかレントゲンで確認する検査です。卵管が正常な場合はさほど痛みは出ないが、詰まっているとめっちゃ痛いという事前情報を得ていたのでかなり覚悟して検査に臨みましたが、結果として目の奥が白くなるくらい痛かった。まず子宮に造影剤のチューブを入れる時点でもう(お母さん助けて……)と手のひらがグーになる。途中で「卵管の通りが悪いので通常より量を増やします、もう少し頑張ってください」と言われた後、お腹の真ん中と右側に熱湯を注入されたのかと思うような痛み、そしてシーンとしてる左側。体感で(左の卵管死んどるな…)と分かりました。結果左は完全に卵管が詰まっている卵管閉塞、右も途中まで通ってはいるが卵管の先からほとんど造影剤が出ておらず、卵管狭窄という診断が下りました。卵管がきちんと通っていないということは精子も通れないから受精もできない、自然妊娠はかなり難しい状態です。この時私はアルコ&ピースの受精説明会のコントを思い出していました。かわいそうな精子よ…(なんらかの方法で見てみてください、うさんくさいセミナー講師の平子さんが最高)
あとその後の子宮鏡検査というやつが油断してたら白目むくほど痛かった。オイ!!聞いとらんぞ!!これは子宮の中をカメラで見ておかしなところがないか確認する検査です。ここは特に異常は見つからず。

検査の中で自費になるから検査をするかどうか決める必要があったのが抗精子抗体の検査(精子を異物として殺してしまう抗体がないか)とAMH検査(卵巣にどのくらい卵子が残っているか)です。私はこのAMH値が45歳相当に値するということが分かりました。またFSHという卵胞を刺激するホルモンも40代並みに強く出ていて、卵巣にホルモンが強く働きかけないと排卵しない状態になっているということも分かりました。つまり実年齢は30歳だけど卵巣はもう40代のような働きで、卵子の在庫がとても限られているということ。ちょっとクラッときました。
卵管因子の不妊ということはわかりつつも、ヒューナー検査という性交直後の膣内の精子の動きを確認する検査も受けましたがこちらは問題なし。そして夫の精液検査の所見にも問題は見当たりませんでした。

 

これらの結果から取れる対応としては、外科的に卵管が通るように手術を受けるか、体外受精ということになります。卵管が詰まっている以上体内では受精できないんですね。ただ私の場合AMH値がかなり低くてタイムリミットが迫っているので、卵管形成の手術をしてタイミング取って……と悠長に自然に授かることを待つ暇はあまりなさそうです。残された時間を考えて、体外受精に踏み切ることにしました。

 

このように不妊治療のための基本検査を一通り受けてみて、検査で分かることってあくまでスタートラインなんだなと思いました。検査では調べようのない妊娠への障害もいくつもあることを知ったし、ありきたりな言葉だけど妊娠・出産って本当に奇跡なんだなって初めてちゃんと実感した。そして一言で不妊症と言っても、人によって全く問題点が違って数え切れないアプローチがあることも知りました。

自分自身への反省は数え切れないくらいあって、でももうどうしようもないことなので前だけ向くしかないんだけど、私と同世代で妊娠を考えている人にはやっぱり最低限一般の婦人科でいいから受診してほしいなと思います。そして子宮内膜症がある人は最初から不妊の基礎検査を受けた方がいいと思う。私は子宮内膜症をナメていて、女が何人か集まればたいてい内膜症持ちの子がいるのでなんかけっこうみんな持ってる疾患のような気がしていたんですね(女子高出身なので同窓会でもあろうもんならすぐ婦人科の話になる)。でもチョコレート嚢腫がある左側の卵管が閉塞してしまっていたので、もっと知識があって最初から検査を受けていれば1年早くスタートできたなぁ、と思います。

ただ保険が効く検査でもトータル5〜6万くらいかかったので、普通に婦人科で分かる範囲のエコーとかで何も問題がない人が最初から受けるのは抵抗があったりするかもしれない。全くの無駄かもしれないしね。なので私が1年前の自分にアドバイスするとしたら、こんな手順はどうだろう?と思っています。
・まず風疹・麻疹の抗体検査をする(夫婦で)。現在は風疹の予防接種は2回打つんだけど、昭和54〜62年生まれの人は1回しか打つ機会がなかったので*2抗体を持っていない可能性がある。これらの抗体を持っているかの検査や混合ワクチンの接種は、妊娠を希望している男女なら無料ないし支援ありで受けられる市町村が多いようなので調べてみて、抗体がなかったら男女とも予防接種を受けておく。
・基礎体温表をつけ始める。あとで病院に持っていくことも考えて、アプリとかでも最終的に紙に出力できるものがいい。私は婦人科でもらった紙の体温表に付けてる。体温がグンっと下がった日に生理が来るのでそれが分かるだけでも便利。
・とはいえ体温表では排卵日の予想はしづらいので(後からの答えあわせでしかないと思っています)、婦人科で卵胞のサイズを見てもらうなどして排卵日の予測を立てて、はじめからきちんとタイミング法を実践する。生理から何日で排卵日が来るかなんて人それぞれだし、体温表も積み重ねがなければ予測ができないので、自分のあやふやな見当で時間を無駄にしない。ルナルナの有料プランに申し込まない。(私です)
・ある程度の期間タイミング取ってみて、妊娠しなければ夫婦で不妊の基礎検査を受ける。今は1年妊娠がなかったら不妊を疑うということになっているようですが、正直私はこの「1年」に囚われすぎたと思ってる。半年とかでも不安になってたら受診した方がいい。「なんでなんで」って思いながら毎月生理が来て落ち込む生活は悲しいので、なんでかは分かってた方がいい。原因不明の不妊ももちろんあるし、分かっても治療がうまくいかないこともたくさんあるけど……。
・保険適応外だろうが検査は全てやる。治療の方針を立てるのに役に立つはず。


使ってた排卵検査薬。高いから海外のものを使う人が多いらしいんだけど私は薬局で買えるこれを使ってた

 

妊娠への漠然とした不安を抱えながらもはじめから不妊検査を受けなかったのはなんでだろうと振り返ってみたけど、今でも本当は自然に妊娠してみたかったなぁってどうしてもどっかで思っているからかな。やっぱり「アナタ♡ワタシ、できちゃったみたい♡」(千鳥)もほんとはやりたかった。夫がどんな顔するか見たかった。自然妊娠にこだわっていたつもりはなかったけど、生命の神秘みたいなものを感じてみたかったのかもしれないなぁ。でも「まだ結婚したばっかりだし」「不妊検査なんて早すぎるんじゃ」と思うこともあるだろうけど、不妊治療に早すぎることは絶対にないと今なら言い切れるよ。杞憂だったらそれはそれでいい。婦人科に行こう!

 

え〜もう5千文字じゃん。がんばって短くしようとしたけど無理でしたごめん。
次回、「え!体外受精もできないの!?ホルモンの馬鹿野郎!」乞うご期待!

 

 

*1:ちなみにHPVワクチンの接種についてはいろんな問題が巻き起こっているけど、私はもし娘ができたら絶対に受けてほしいと思っています。よかったら最新のガイドラインを読んでみてほしい。
日本産科婦人科学会 

「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」


あとBuzz Feedのこの記事がわかりやすい。

 

www.buzzfeed.com(副作用問題など、自分が接種済みのワクチンなので気になって追っていた)

*2:くわしくはこちらで。