海を走る氷の馬

この世の楽しそうなこと全て体験しないと気が済まない

超高級免許証

 

長きに渡る戦いに今日終止符が打たれた。
運転免許が交付されたのである。
つらく苦しい冬は終わり、民には笑顔がもたらされた。

もうこんなに免許が難しいものだとは思わなかったんだよ〜!!!!!!

得意なジャンルではないとは思っていた。方向音痴で反射神経も鈍くて運動がまるっきりダメだし、マリオカートしてもジュゲムに吊るされてる時間の方が長い。それでも「普通の人の下位グループ」くらいだと思っていて、まさかみきわめ前に規定時間内で講習が終わらず補修、みきわめに落ち、仮免に3回落ち、卒業検定に5回落ちて追加で8万5千円も支払うことになろうとは露も思わなかったのです。8万5千円て。沖縄3泊4日行けるわ。入所時に[何回落ちても検定を無料で受け直せる安心パック]という選択肢があったんだけど、「別にいらないでしょ」と高をくくっていたあの時の自分に「愚者」の焼印を押したい。全身に押したい。でもほんと、やってみないと分からなかったわこればっかりは……


私はわりと「やってみないと分からない」という言葉を使いがちなんだけど、ネガティブに思われることにたいして「まぁでも実際どうか分かんないしね!」という気持ちで使ってばかりで、なるほど〜世の中にはこういうパターンの「やってみないと分からない」もあるんだね〜勉強になりましたわ〜〜〜と灰になりながらお金を払い続けた。検定に落ちるたびに補修代と再受験代で飛んでいく1万円。砂となって消える自尊心。みんなが当たり前のようにやっていることが出来ないなんて、私にはなにか重大な欠陥があるのでは……??実際検定で他の受験者の運転を見てるとみんな進路変更もデカい交差点の右折も路上駐車で狭くなった道もスイスイ運転こなしてるんですよね。何度も何度も試験に落ちている上に、2人1組で検定を実施するにあたり受験者が奇数の時に後ろに同乗する係として選ばれることが多かったので(見て覚えろよという配慮と予想)、12回くらいは教習生の運転する車に乗ったんじゃなかろうか。みんなたいして危なげなく落ち着いて運転してて、しゅごい……めっちゃなめらかにうんてんしてる……めんきょもまだないのに……と白目むきながら幼児退行。もううんてんやだ!こうどうでるのこわい!めんきょいらない!!!と何度もイヤイヤ期が来て暴れ回った。夜が来ると涙が出る、教習所ではじめての過呼吸、運転中に「このまま追突されて死にたい」と思ったりなど、振り返るとこれって軽く鬱の症状なのでは!?ストレスで過食傾向が加速してめちゃくちゃ太ったし。デブなのは免許のせいです。そうなんです。私のせいではないんです。

 

私は手元にピントを合わせて集中するタイプの仕事をしており、また昔からそういう目の使い方しかしていないので、「広い視野でどこかを注視することなく全体を見る」ということが全く出来ないんですよね。なので道路全体で今なにが起きているのか、ということが捉えられない。しかも反射神経も動体視力もクソなので目で見てからそれがなにか理解して体が動くまでが遅すぎて教官にブレーキを踏まれる→検定中止、というパターンがほとんどでした。よく「2秒よそ見したら事故になる」とかいうじゃないですか。それがよそ見してないのにナチュラルに起こってしまうんですよね……。ブレーキ踏まれてるってことは自分の判断は間に合ってないってことで、もう自分が事故を起こす絵がイメージできすぎて「運転する」こと自体がパニックのトリガーになってしまった。そして常時パニックなのでますます正しい判断ができなくなり、無限ループ。チーン。一度抱いてしまった苦手意識って払拭するの本当に難しいんですよね。緊張で手が震える、っていうのもはじめて経験しました。
1回は検定中に明らかに意地悪されて、交差点で一般車がパーンて前に割り込んできてすぐウィンカー出して止まって、私はなにが起きたか分からずパニックになっているうちにブレーキ踏まれて終わった。(私の目には突然目の前に車が"産まれた"と映った)初心者マークの車には幅寄せ割り込み禁止って習ったでしょ!!いわんや検定中の教習車をや!!!!と家に帰ってから1人悲しく憤ったのち泣いた。

 

そもそもなぜ免許を取ろうと思ったかというと、夫&その両親の唯一のリクエストが「子ども出来る前に免許を取ってほしい」だったからなんですよね。言われた時は私も「まぁ便利なんだろうな」と軽く承諾したけど前述のような状態になり発狂。でもここで一番悔しかったのが、「今すぐ運転が必要な訳じゃないから身が入らないよね」という態度!確かにすぐ車を買う予定もないし今現在全く必要じゃない。だからと言って真剣にやってない訳じゃないしなんなら真面目にやっとるからこそ辛いんじゃい!!アホ!!!!!「みんなぶつけながら上手くなるんだよ」じゃないんじゃ!!!!!!!!
まぁ当然技術なんて慣れと比例して身に付けるもので、やらないと上手くなんてならないのは分かってるんですよ。でもやったから上手くなるとは限らないんだよね!なぜなら悲しいかな適性というものがあるから。私はこの辺りから運転できる人とできない人の間には深く暗い川が流れていることに気付いてしまったのです。もうこれは運転できる人には絶対に理解してもらえない。どんなに言葉を尽くしても実の親にも分かってもらえないし、逆に運転のコツを言葉で言われても分からない。「えっ卵食べないの!?え〜絶対あった方が便利だよ、おかずにもおかしにもなるし栄養価も高いよ!」って言われても、私、たまごアレルギーなんです……。という気分になり、逆に免許取ったら危ないのでは?「慣れる慣れる!」って運転させられないためにも、いつまでも法的に運転出来ない方が安全なのでは……?と思い詰めるまでに至ってしまった。


それでも諦めずに6回も卒業試験を受けたのは、ひとえに意地です。義母の友人が2回も教習所を途中で諦めて辞めて、3回目の時は本当に子供の送り迎えで車が必要になって泣く泣く取った、という話を聞いていたので、途中でやめたら「今すぐ運転が必要な訳じゃないから」取れないって思われると分かりきっていました。必要ないからできないんじゃない。根本的に無理なんだ!見ろ!5回も落ちたぞ!という堂々とした気持ちで最終的にはたぶんめちゃくちゃオマケしてもらって受かりました。こんな危険人物にも免許が交付される世の中なので、みなさん車に乗るときは後部座席でも必ずシートベルトをしましょうね。Hinaticからのお願いでした。